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【世界のロケット】欧州・中国のロケット

【世界のロケット】欧州・中国のロケット

 ここ数年で、世界で打上げられているロケットの数は急激に増えています。それは今までより「宇宙」が近づいてきていることの証でもあります。そこで現在どのようなロケットが活躍しているのか、簡単に紹介したいと思います。第3回は欧州・中国のロケットです。

ヨーロッパ(ESA)

 ヨーロッパ各国が共同で設立した宇宙開発・研究機関が「欧州宇宙機関(ESA)」です。1975年に設立され現在は22か国が参加し、2,000人以上のスタッフが働いているそうです。本部はフランスにあり、ロケットの打上はフランス領ギアナにある「ギアナ宇宙センター」を射場として使用しています。

 人工衛星、ロケットの開発も行い、アリアンスペース社を通して世界各国の民間人工衛星の打上実績を行っています。また、地球観測や太陽系内探査も行っており、NASAや日本の研究機関とも連携しながら研究分野の活動も行っております。

 ESAは有人宇宙船を行ったことがなく、1970年代にヨーロッパ版スペースシャトル計画ともいえる「エルメス計画」が考えられましたが、中止になり現在も有人宇宙船を持っていません。

Ariane 5

Arian5
 ヨーロッパで使用されていた使い捨てロケットです。欧州宇宙機関(ESA)と、エアバス航空宇宙部門「EADS Astrium」により設計・製造され、アリアンスペースによって販売されていました。1996年6月4日の初打上から2023年まで運用されました。

 「Ariane 5」は、1980年代に計画されてた欧州の再利用型有人宇宙船「エルメス」を乗せて宇宙へ行く計画もありましたが、1990年代に計画が中止となり「Ariane 5」が有人宇宙船を宇宙へ運ぶことはありませんでした。しかし、そのペイロードを活かして大型の人工衛星を2機同時に打上げる「デュアル・ローンチ」や、大型の人工衛星、観測衛星の打上に活躍しました。

 2021年12月25日には、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打上を担当しました。

Ariane 5(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:52m
・直径:5.4m
・重量:777,000㎏
・段数:2段
・ブースター:EAP×2本
・第1段エンジン:ヴァルカン1×1基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:エスタス×1基(液体燃料エンジン)
・初打上:1996年6月4日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):16,000㎏
・静止トランスファ軌道(GTO):6,950㎏

※各数値は使用状態により異なる場合があります

中国(中国国家航天局)

 中国の民間宇宙開発を管轄しているのが「中国国家航天局」です。中国における民間用ロケットの開発や打上、有人宇宙船「神舟」、中国の宇宙ステーション「天宮計画」、月探査計画「嫦娥計画」、太陽系内探査などを管轄しています。

 中国ではそれ以外に「人民解放軍総装備部」が軍事的、ロケット射場の管理などを行ってます。

長征3号

長征3号
 中華人民共和国で使用されているロケットです。1984年に初飛行を行った長征3号から、多くの派生形が誕生し、現在でも運用が続いているロケットです。第3段を改良した「長征3号A」、4本の液体燃料ブースターを調整3号Aにつけた「長征3号B」、2本の液体燃料ブースターを調整3号Aにつけた「長征3号C」などがあります。中華人民共和国の月面着陸機「嫦娥3号」は、「長征3号B/G3」が使用されました。

【長征3号シリーズ】
 長征3号:1984年に初打上。大型通信衛星を静止トランスファ―軌道に投入するために活躍。長征3号A登場に伴い運用終了しました。
 長征3号A:1994年に初打上。3段目を改良したモデル。中国初の月探査機「嫦娥1号」を打上げました。
 長征3号B:1996年に初打上。長征3号Aの周囲に4本の液体燃料補助ブースターをつけたモデル。
 長征3号B/E:2007年に初打上。長征3号Bの第1段をさらに強化したモデル。中国の月探査機「嫦娥3号」を打上げました。
 長征3号C:2008年に初打上。長征3号Bの液体燃料補助ブースターを2本減らして2本で運用しているモデル。

長征3号(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:43.3m
・直径:3.4m
・重量:204,000㎏
・段数:3段
・ブースター:EAP×0/2/4本
・第1段エンジン:液体燃料エンジン×4基
・第2段エンジン:液体燃料エンジン×1基
・第3段エンジン:液体燃料エンジン×2基
・初打上:1984年1月29日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):5,000㎏
・静止トランスファ軌道(GTO):1,340㎏

※各数値は使用状態により異なる場合があります

ロシア(ロスコスモス)

 ロシアの宇宙科学、航空工学を支えてきたのが「ロスコスモス」です。宇宙開発機関「ロシア連邦宇宙局」と、ロシアの民間宇宙企業を統合した「国営企業統一ロケット宇宙会社」が元になっています。

 宇宙ステーション「ミール」の運営、国際宇宙ステーションへの参画、ソユーズロケットの開発・製造、国際宇宙ステーション補給船「プログレス補給船」の開発・運用から、月や火星などの太陽系内探査などまで幅広く活動を行っています。

ソユーズ

ソユーズFG
 ソユーズは、ソビエト連邦(現ロシア)が開発した使い捨てロケットです。1966年に初飛行を行ったあと、数々の改良がくわえられて現在でもロシアの主力ロケットとして運用されている、歴史の長いロケットです。ソユーズロケットは、人工衛星の打上の他、有人宇宙船の打上、国際宇宙ステーションへの補給を行う「プログレス補給船」の打上などを行っています。

 ソユーズロケットは、中央部は2段ロケットなっており、その周囲に4基のロケットを束ねた構成になっています。日本やアメリカのロケットの場合、周囲に配置したロケットを「補助ロケット」などと呼び、ロケットの段数には数えませんが、ソユーズロケットの場合、周囲に配置した4基のロケットを1段目と呼んでいます。

 1973年から2014年まで運用された、無人でも有人でも打ち上げが可能になった「ソユーズU」、2001年から2019年まで運用された、多くの宇宙飛行士を宇宙に運んだ「ソユーズFG」、2004年から運用をはじめ現在も使用されている「ソユーズ2」など、様々な改良型があります。

ソユーズ(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:49.5m
・直径:10.3m(打上時1段目)/2.95m(中央部)
・重量:305,000㎏
・段数:2段(3段:フレガード使用時)
・ブースター:RD-107A×4基×4本
・第1段エンジン:RD-108A×4基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:RD-0110×4基(液体燃料エンジン)
・初打上:1966年11月28日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):7,100㎏
・静止トランスファ軌道(GTO):4,500㎏

※各数値は使用状態により異なる場合があります