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【世界のロケット】アメリカのロケット

【世界のロケット】アメリカのロケット

 ここ数年で、世界で打上げられているロケットの数は急激に増えています。それは今までより「宇宙」が近づいてきていることの証でもあります。そこで現在どのようなロケットが活躍しているのか、簡単に紹介したいと思います。第2回はアメリカのロケットです。

アメリカ航空宇宙局(NASA)

  アメリカ合衆国における、宇宙開発に関わる計画を担当するのがNASAです。1958年7月29日に設立され同年10月1日より正式に活動を開始しました。
 ロケット開発をはじめ、アポロ計画による人類初の月面着陸や国際宇宙ステーションの運用支援などを行っています。

 NASAの役割は代表的な宇宙開発だけではなく、宇宙空間の平和目的及び軍事目的における長期間の探査です。人工衛星を用いた地球の探査、探査機を用いた太陽系内探査や、軍事衛星の打上などもNASAの業務に含まれます。

【アメリカ航空宇宙局公式サイト】

SaturnⅤ

Saturn Ⅴ
 NASAのアポロ計画及びスカイラブ計画で使用された、大型3段式ロケットです。全高、総重量、ペイロード(搭載物重量)などの項目でギネス記録を持つ史上最大のロケットでもあります。アポロ計画、スカイラブ計画を含めて13回打上げが行われましたが、ロケットの打上自体は全て成功しています。

 ウェルナー・フォン・ブラウン博士を中心に、ボーイング社、ノース・アメリカン社、ダグラス社、IBM等、当時の大手航空機メーカーなどが結集して製造されました。各企業が担当箇所を製造し、最終的にボーイング社が引き取り完成状態のサターンⅤ型ロケットを製造しました。

SaturnⅤ(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:110.6m
・直径:10.1m
・重量:3,038,500㎏
・段数:3段
・ブースター:-
・第1段エンジン:F-1×5基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:J-2×5基(液体燃料エンジン)
・第3段エンジン:J-2×1基(液体燃料エンジン)
・初打上:1967年11月19日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):118,000㎏
・月軌道:47,000㎏

※各数値は使用状態により異なる場合があります

Space Shuttle

Space Shuttle
 NASAが1981年から2011年にかけて使用した、世界初の再利用可能な有人宇宙船です。1981年の初飛行から、2011年7月までに135回の飛行を行いました。

 スペースシャトルは、本体ともいえる「軌道船」、オレンジ色の「外部燃料タンク」、「固体燃料補助ロケット」の大きく3つで構成されていますが、「軌道船」が再利用されるのは有名ですが、「固体燃料補助ロケット」も海にパラシュートで落下した後に船で回収し整備後再利用されていました。

 スペースシャトルの特徴のひとつに軌道船の大部分を貨物室が占めている点で、そのサイズは4.6m×18.0mもあり、ここに収納した物を宇宙から地球に下ろすこともできます。

【実際に宇宙に行った軌道船】
・OV-099チャレンジャー
・OB-102コロンビア
・OV-103ディスカバリー
・OV-104 アトランティス
・OV-105 エンデバー

【宇宙に行っていない軌道船】
・OV-101エンタープライズ

 このうちチャレンジャー号は、1986年1月28日、打上直後に分解し乗組員7名全員が死亡する事故を起こしました。
 またコロンビア号は、2003年2月1日、大気圏再突入時に空中分解し乗組員7名が死亡する事故を起こしました。

Space Shuttle(諸元/打上能力)

【諸元/打上状態】
・全長:56.1m
・直径:8.7m
・重量:2,028,000㎏
・段数:2段
・ブースター:SRB×2本
【軌道船】
・全長:37.237m
・全幅:23.79m
・全高:17.86m
・第1段エンジン:SSME×3基(液体燃料エンジン)
・初打上:1981年4月12日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):24,400㎏
・静止トランスファ軌道(GTO):3,810㎏

※各数値は使用状態により異なる場合があります

SLS Block1(Space Launch System)

SLS Block1
 SLSはNASAが開発した、月面探査計画「アルテミス計画」を支える大型ロケットです。月面探査をはじめ、火星探査、小惑星探査や地球近傍への物資輸送などを想定して開発されました。

 今後は「アルテミス計画」の進行に合わせて、Block1からBlock1B、Block1B Cargo、Block2 Crew、Block2 Cargoと進化する予定になっています。月面に宇宙飛行士を運ぶ際には「オリオン宇宙船」が搭載され、4名の宇宙飛行士を月面に送ることが出来ます。

SLS Blok1(Space Launch System)(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:98.1m
・直径:8.4m
・重量:1,590,000㎏
・段数:2段
・ブースター:SRB×2本
・第1段エンジン:RS-25D×4基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:RL10 B-2×1基(液体燃料エンジン)
・初打上:2022年11月16日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):95,000㎏
・月軌道:27,000㎏

※各数値は使用状態により異なる場合があります

アメリカ合衆国

Delta Ⅳ

Delta Ⅳ
 アメリカ合衆国で使用されている、完全使い捨てロケットです。ボーイング社が設計を行い、生産・運用は、ロッキード・マーティン社とボーイング社の合弁会社「ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)」が運用を行っています。デルタロケットシリーズの最終モデルで、2019年8月22日の打上で運用を終了しています。ただし、第1段目を補助ロケットとして2本使用する「DeltaⅣ Heavy」は、2004年12月21日の運用開始後、2024年までは運用を継続することになっています。

 Delta Ⅳの第1段エンジンに使用されている「RS-68」エンジンは、アメリカのRocketdyne社が設計製造したロケットエンジンで、推進剤に液体水素を使用する液体燃料エンジンです。スペースシャトルのメインエンジンに採用された「SSME」エンジンに対して約2倍程度の推力があります。

Delta Ⅳ(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:63m
・直径:5m
・重量:249,500㎏
・段数:2段
・補助ロケット(ミディアム):GEM60×0/2/4本
・補助ロケット(ヘビー):RS-68×1基×2本
・第1段エンジン:RS-68×1基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:RL10-B-2×1基(液体燃料エンジン)
・初打上:2002年11月20日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):8,600㎏以上
・静止トランスファ軌道(GTO):3,900㎏以上

※各数値は使用状態により異なる場合があります

Atlas Ⅴ

AtlasⅤ
 アメリカ合衆国で使用されている、完全使い捨てロケットです。当初はロッキード・マーティン社が運用を行っていましたが、2010年代からはロッキード・マーティン社とボーイング社の合弁会社「ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)」が運用を行っています。

 第1段エンジンで使用している「RD-180」は、ロシアで開発されたエンジンで、第2段エンジンで使用している「RL-10」は、アメリカで開発されたエンジンを使用しています。現在までの成功率はほぼ完ぺきに近い性能を示していますが、エンジン供給の懸念などもあり、2021年8月にアトラスⅤのこれ以上の受注を行わないことを発表。残り29回の打上が終わり次第運用終了が決まっています。

Atlas Ⅴ(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:59.7m
・直径:3.7m
・重量:334,500㎏
・段数:2段
・補助ロケット(ノーマル):SRB×0本~5本
・補助ロケット(ヘビー仕様):RD-180×1基×2本
・第1段エンジン:RD-180×1基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:RL10A×1基/2基(液体燃料エンジン)
・初打上:2002年8月21日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):9,797㎏以上
・静止トランスファ軌道(GTO):4,750㎏以上

※各数値は使用状態により異なる場合があります

Falcon 9

Falcon9
 アメリカ合衆国で使用されているロケットで、第1段目を再利用するなど様々な工夫をすることで、徹底した低コスト化を図ったロケットです。民間企業SpaceXが設計・製造を行い、2010年6月4日に初打上が行われ、現在280回以上の打上が行われた打上実績の多いロケットです。

 「Falcon 9」の名前は、映画『スター・ウォーズ』に登場する「ミレニアム・ファルコン号」に由来し、名前の後ろにつく数字は、第1段エンジンの数になっています。数字が示す通り「Falcon 9」の第1段は9つのロケットエンジンを使用した「クラスターロケット」になっていますが、このうち1つが停止しても打上が続行できるようになっています。

 「Falcon 9」は人工衛星の打上だけではなく、無人宇宙船「Dragon」を使用しての国際宇宙ステーションへの補給や、有人宇宙船「Dragon2」を使用しての有人宇宙船の打上まで、幅広い運用が行えるロケットです。現在までに適宜改良がおこなわれ、現在は「Falcon 9 block5」と呼ばれているモデルが運用されています。

Falcon 9(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:70m
・直径:3.7m
・重量:549,054㎏
・段数:2段
・補助ロケット:-
・第1段エンジン:Merlin1D×9基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:Merlin1D Vacuum×1基(液体燃料エンジン)
・初打上:2010年6月4日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):22,800㎏
・静止トランスファ軌道(GTO):8,300㎏
・火星軌道:4,020㎏

※各数値は使用状態により異なる場合があります

Falcon Heavy

Falcon Heavy
 アメリカ合衆国で使用されている「Falcon9」の発展型として開発されたロケットです。「Falcon9」第1段目を補助ロケットとして2本使用することで、「Saturn Ⅴ」ロケットの約半分ほどのペイロードを生み出しています。

 既に完成している「Faclon 9」を3本束ねるだけで完成しそうに見えますが、技術的な問題が多く発生してしまい、結果的に中央にある「センターコア」は「Faclon 9」をそのまま使用することはできず、新規設計になってしまっています。特に問題になったのは、大きな機体を3本も束ねたことによる空気抵抗・空力特性の変化への対応、打上時に「センターコア」へかかる負荷の対応、打上時に使用する9基×3本=計27基のロケットエンジンの制御対応などを解決するには、新規設計にせざる負えなかったと言われています。

 「Falcon 9 Heavy」の初打上は、2018年2月6日に実施されました。この時のペイロードは「テスラ・ロードスター」が選ばれ、運転席には「Starman」と名付けられたSpaceXが当時開発中だった宇宙服が座っていました。この時の打上から宇宙空間を飛行する「テスラ・ロードスター」の様子はYouTubeを通して全世界に中継され、視聴者数はYouTube歴代2位を記録したそうです。この「テスラ・ロードスター」は、現在火星軌道を超えて、小惑星帯に達する太陽周回軌道に入ったそうです。

Falcon Heavy(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:70m
・直径:12.2m
・重量:1,420,788㎏
・段数:2段
・補助ロケット:Merlin1D×9基×2本
・第1段エンジン:Merlin1D×9基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:Merlin1D Vacuum×1基(液体燃料エンジン)
・初打上:2018年2月6日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):63,800㎏
・静止トランスファ軌道(GTO):26,700㎏
・火星軌道:16,800㎏

※各数値は使用状態により異なる場合があります

Star ship

Star ship
 アメリカ合衆国の民間企業SpaceXが開発している、完全再利用型2段式大型ロケットです。第1段を「スーパーヘビー」、第2段を「スターシップ」と呼んでいます。第2段の「スターシップ」は、人工衛星や荷物、宇宙飛行士や乗客を運ぶことが出来ますが、それと同時に第2段自体が長期間滞在することを前提に設計・開発されている、ロケットと宇宙船の機能を兼ね備えたものになっています。

 第2段の「スターシップ」には、有人宇宙船、衛星打上、月着陸船、タンカー(宇宙空間にいる「スターシップへの燃料補給」)の4パターンが用意される予定です。第1段の「スーパーヘビー」は「Faclon 9」の第1段と同じく打上後再利用されますが、「スーパーヘビー」の第1段は発射台に帰ってくるところが「Faclon 9」の第1段目との大きな違いとなります。

 「スターシップ」は、そのペイロード(搭載重量)と完全再利用型という点から、初飛行を終えた後、宇宙開発が大きく変化するのではと言われています。

Star ship(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:120m
・直径:9.0m
・重量:4,400,000㎏
・段数:2段
・ブースター:-
・第1段エンジン:Raptor2×33基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:Raptor2×36基(液体燃料エンジン)、Raptor2 Vacuum×3基
・初打上:開発中

【打上能力】
・地球低軌道(LEO):250,000㎏
・静止トランスファ軌道(GTO):6,950㎏
・月周回軌道:100,000㎏

※各数値は使用状態により異なる場合があります