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【世界のロケット】日本のロケット

【世界のロケット】日本のロケット

 ここ数年で、世界で打上げられているロケットの数は急激に増えています。それは今までより「宇宙」が近づいてきていることの証でもあります。そこで現在どのようなロケットが活躍しているのか、簡単に紹介したいと思います。第1回は日本のロケットです

宇宙航空研究開発機構(JAXA)

 日本の航空宇宙開発を担う国立研究開発法人です。2003年10月1日に、文部科学省宇宙科学研究所(ISAS)、独立行政法人航空宇宙技術研究所(NAL)、特殊法人宇宙開発事業団(NASDA)が統合されて誕生しました。現在は内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省が共同で所管しています。職員数は2024年3月現在1,600名と、国立研究機関法人格の中では最大規模の組織となっています。

 ロケット開発、人工衛星の開発と利用促進などを担当する「第一宇宙技術部門」、国際宇宙ステーションの日本実験モジュール「きぼう」など有人宇宙システムなどを担当する「有人宇宙技術部門」、惑星探査、天体観測衛星などの開発、運用を担当する「宇宙科学研究所(ISAS:アイサス)」、航空技術などの研究開発を担当する「航空技術部門」などの部門があり、それぞれが各担当業務を行っています。

※JAXAから管理が移管したロケットもこちらで紹介しております。

【宇宙航空研究開発機構(JAXA)公式サイト】

H3ロケット

H3
 「日本の技術で、宇宙輸送をリードせよ。」をモットーに開発された次世代大型基幹ロケットです。現在運用中の「H-ⅡAロケット」の後継機として2012年頃から開発が進められ、2023年度内の試験機打ち上げを目指しています。H-ⅡAでは打上コストが高いため商用化が難しいと言われていた点を改善し、1回あたりの打上コストをH-ⅡAの半分となる約50億円を目指しています。

 日本のロケットとしては珍しく、第1段メインエンジン(LE-9)を2基ないし3基搭載する「クラスターロケット」となっています。打上回数と打上コストを削減するため射場整備期間の短縮も同時に検討されH-ⅡAの約半分の期間まで短縮させています。
※開発企業名は主な企業名を表記しております。実際には多くの企業が開発に携わっています。

H3ロケット(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:63m(ロングフェアリング)/57m(ショートフェアリング)
・直径:5.2m
・重量:574,000㎏(仕様により変化)
・段数:2段
・ブースター:SRB-3×0/2/4本
・第1段エンジン:LE-9×2基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:LE-5B-3×1基(液体燃料エンジン)
・初打上:2023年3月7日

【打上能力】
・太陽同期軌道(SSO/高度500㎞):4,000㎏以上
・静止トランスファ軌道(GTO):6,500㎏以上

H-ⅡAロケット

H-ⅡA
 2023年現在、日本の主力大型ロケットとして運用されているロケットです。日本初の純国産ロケット「H-Ⅱロケット」の技術を元に高い信頼性と低コストで打上を行うために開発されました。打上コストは、ロケットの構成により変化しますが約85億円~120億円と言われています。2001年8月29日に試験機1号機が打上られてから、47号機までの間で失敗は1回だけで打上成功率は97.9%を達成しています。

 固体ロケットブースター(SRB-A/SRB-A改良型/SRB-A3)2基/4基と、固体補助ロケット(SSB)無/2基/4基と、搭載人工衛星にあわせて変更して運用できるようになっています。2007年度以降は三菱重工業が生産ラインを管理することになったため、複数あったラインアップは、固体ロケットブースター2基の「H2A202型」と4基の「H2A204型」の2ラインアップのみとなっています。
※開発企業名は主な企業名を表記しております。実際には多くの企業が開発に携わっています。

H-ⅡAロケット(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:53m
・直径:4.0m
・重量:289,000㎏
・段数:2段
・ブースター:SRB-A×2/4本
・第1段エンジン:LE-7A×1基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:LE-5B×1基(液体燃料エンジン)
・初打上:2001年8月29日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO/高度300㎞):10,000㎏
・太陽同期軌道(SSO/高度800㎞):3,300㎏以上
・静止トランスファ軌道(GTO):4,000㎏以上

H-ⅡBロケット(2020年5月に運用終了)

H-ⅡB
 H-ⅡAロケットの設備と技術を用いてH-ⅡA以上の能力を持つロケットとして開発されました。メインミッションが国際宇宙ステーション補給機(HTV)の打上のため、16.5t以上の打上能力が必要でした。そこで第1段エンジンを2基束ねるクラスターロケットを日本で初めて採用したロケットです。

 設備開発や機体開発をJAXA、三菱重工業で分担し可能な限りH-ⅡAの資産を流用することで合計約418億円のプロジェクトとなり、これはH-ⅡAロケット開発費1,532億円と比べて極めて低く抑えられたと言われています。また、2009年9月11日に打上られた試験機1号機から2020年5月21日に打上られた9号機まですべて打上成功と打上成功率100%を誇るロケットでもあります。
 2020年5月21日に打上た9号で運用終了となっています。
※開発企業名は主な企業名を表記しております。実際には多くの企業が開発に携わっています。

H-ⅡBロケット(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:56.6m
・直径:5.2m
・重量:531,000㎏
・段数:2段
・ブースター:SRB-A×4本
・第1段エンジン:LE-7A×2基(液体燃料エンジン)
・第2段エンジン:LE-5B×1基(液体燃料エンジン)
・初打上:2001年8月29日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO/高度300㎞):19,000㎏
・HTV軌道:16,500㎏
・静止トランスファ軌道(GTO):8,000㎏
※HTV軌道以外は、JAXA報告書からの抜粋値

イプシロンロケット

イプシロンロケット
 宇宙利用の敷居を下げるため、低コスト化と打上までの期間短縮、搭載する機器に対する条件の緩和などを目指して開発されたロケットです。第1段ロケットエンジンにはH-ⅡAで使用しているSRB-Aを使用し、第2段と第3段には、M-Vの技術を採用することで、短期間・低コストでのロケット開発を達成しています。この結果、イプシロンロケットは、ロケット製造にかかる時間を1年以内、射場の作業日数約1週間程度と極めて短い時間で打上げることが可能となっています。 試作機2号機からは、強化型イプシロンとなり第2段エンジンが強化されています。

 今後はH3ロケットとのシナジー化を進めた「イプシロンS」を開発し、さらなる打上コスト削減を図る予定です。H3と部品共通化などのシナジー強化することで、H3ロケット、イプシロンSロケット双方の製造・打上コスト削減と、安全・安定性向上を図る予定です。
※仕様等は強化型イプシロンの値です。
※開発企業名は主な企業名を表記しております。実際には多くの企業が開発に携わっています。

イプシロンロケット(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:26m
・直径:2.6m
・重量:95,400㎏
・段数:3段
・ブースター:-
・第1段エンジン:SRB-A×1基(固体燃料エンジン)
・第2段エンジン:M-35×1基(固体燃料エンジン)
・第3段エンジン:KM-V2c×1基(固体燃料エンジン)
・初打上:2013年9月14日

【打上能力】
・地球低軌道(LEO/高度300㎞):1,200㎏
・太陽同期軌道(SSO):590㎏
※地球低軌道の値はイプシロン試験機の値

SS-520ロケット

SS-520
 JAXAと宇宙科学研究所(ISAS)が開発・運用している、観測用2段式固体燃料ロケットです。JAXAで運用されている観測ロケットの中では最も大きなロケットです。目的にあわせて2段式で運用する場合と、2段目の上に3段目を追加した3段式の場合と使い分けることが可能です。

 3段式の場合、低軌道に約4㎏の人工衛星を打ち上げることができ、5号機は2021年11月4日、高度756㎞に超小型人工衛星を打上げ、「実際に人工衛星を打ち上げた史上最少のロケット」としてギネス世界記録に認定されました。
※開発企業名は主な企業名を表記しております。実際には多くの企業が開発に携わっています。

SS-520ロケット(諸元/打上能力)

【諸元】
・全長:9.65m
・直径:0.52m
・重量:2,600㎏
・段数:2段
・ブースター:-
・第1段エンジン:固体燃料モータ
・第2段エンジン:固体燃料モータ
・初打上:1998年2月5日

【打上能力】
・高度800㎞:100㎏