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【宇宙開発】月の砂から酸素を生み出す!

【宇宙開発】月の砂から酸素を生み出す!

(credit:ESA)

私たちは、生きていく上で、空気や水などいくつかの資源が必ず必要となります。それらの資源の多くが酸素と密接な関係にあります。

欧州宇宙機関(European Space Agency:以下ESA)に所属するイギリスの技術者は現在、月の砂から、この酸素を生み出す研究を行っています。

ESA公式サイト:Turning Moon dust into oxygen

月で「酸素」を作る意味

 私たち人類は、宇宙へ挑む橋頭堡として、地球から最も近い天体である「月」を選び、地球唯一の衛星「月」での活動をより簡単なものにしようと試みています。

 その試みとして、月軌道上での宇宙ステーションや月面基地の建設などが計画されています。いくつかの試み全てに共通することは、月またはその近辺に人間が長期間滞在することにあります。

私たちが生きていく上で必要なもの

 私たち人類は、生命維持のために、空気や水などいくつかの資源が必要となります。それらの資源の多くは、実は酸素と密接な関係を有しています。

 そのため宇宙では、安定した酸素の供給を達成することが、とても重要になってきます。

必要な酸素を全てロケットなどの輸送手段で宇宙に届けるには難しい

 生命維持に必要な酸素を地球から毎度輸送することは、莫大な費用が掛かることなどから非現実的で、他の手段が必要となってきます。

 そこで月面における酸素の供給方法として、酸素を現地で生成する方法が計画されています。

 月面には多くの鉱物が存在し、それらは地球上の鉱物と大きな違いがありません。そのため、地球上の鉱物から酸素を抽出する方法を応用できないか、研究と開発が進められています。

月面の「砂」から酸素を生み出す

 英国企業Metalysisは、製造用金属を製造するため地球上の鉱物から酸素を抽出するプロセスをすでに開発しています。

 ESAは、Metalysisと約25万ポンドの契約を結んで、この技術を月面・宇宙環境で利用できるようにする開発プロジェクトを進めています。

 また、ESAはこのプロジェクトを「恒久的かつ持続可能な月面での活動」を確立するための1つの準備と位置付けています。

 The Times UKは11月9日、Metalysisはこの技術を用いた酸素抽出プロセスをシミュレートされた月の砂(人工レゴリス)に応用して、酸素の抽出に成功したと報じています。

 ESAは同様の内容を11月27日に公式サイトに掲載し、月の砂(レゴリス)から酸素を抽出する(生み出す)可能性が開けたことを伝えています。

 ESAとMetalysisは、酸素の生成過程を追跡するシステムの開発を並行して行い、質と量の両面において優れた酸素生成システムの開発を進めているそうです。

月面の「砂」から酸素を生み出す「大きな壁」

 ESAはこのプロジェクトを「恒久的かつ持続可能な月面での活動」の準備としていますが、酸素の抽出源は月面の砂(レゴリス)であり、それは月における有限資源でもあります。

 また、酸素を抽出する際は、温度変化がある程度の影響を及ぼすことから、厳格な温度管理が要求されるということです。

 これらを考慮した際、いくつかの課題や不安要素をESAやMetalysisが、今後どのような方法で解決していくのか、引き続き注目してみたいと思います。

(文・荒井 碧)