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【天文】ハワイとチリの望遠鏡から、金星の大気中にホスフィンの痕跡を確認

【天文】ハワイとチリの望遠鏡から、金星の大気中にホスフィンの痕跡を確認

(Credit: NASA)

 2020年9月15日、科学誌「ネイチャー アストロノミー」(Nature Astronomy)に、スペクトル観測の結果、金星の大気中にホスフィン(PH3)の痕跡を確認することができたことを示す論文が掲載されました。

論文の原本はこちら

金星の大気中からホスフィン(PH3)の痕跡を確認

 金星の大気は過酸な環境であり、ホスフィン(PH3)は即座に分解されてしまうと考えられています。しかし、今回はその大気中からホスフィン(PH3)の痕跡を確認することができたため、金星にホスフィン(PH3)を排出または放出する「何かしらの生成源」が存在する可能性が飛躍的に高まったと考えられています。

ホスフィン(PH3)は生命体存在の兆候(バイオシグネチャー)?

 ホスフィン(PH3)は、地球上においては嫌気性生物から排出されるものであるため、地球外生命体の探査において、生命体存在の兆候(バイオシグネチャー)として利用できるのではと、その可能性が指摘されていた物質です。

そのため、金星のホスフィン(PH3)も生物由来である可能性も否定できません。

ハワイとチリの2つの電波天文台から観測

 研究チームはハワイ(JCMT)とチリ(ALMA)2つの電波望遠鏡を使用し、地球上の異なる地点から金星を観測しました。どちらの施設でも金星の大気中にホスフィン(PH3)の痕跡を確認することができ、同様の観測結果をもたらすことが可能な、既知である合理的な成分候補はないと結論付けることができました。

 研究チームは、ホスフィン(PH3)の痕跡をスペクトルの分析結果によって確認しました。スペクトルとは、波長ごとにおける光の強度分布を配列したもので、スペクトル分析では主に波長ごとの光の強度に注目します。一部の物質は特定の波長域の光を吸収する性質を有しているため、光の強度からどのような物質が存在するかなどを確認することが可能です。

 掲載された論文では、スペクトルを分析した結果、ホスフィン(PH3)が影響を及ぼす波長域の光が吸収されていることが確認されたことが示されていました。今回はこの結果を、ハワイとチリの2つの電波天文台で同様の観測結果を得ることが出来たため、観測結果に信頼性を持たせることが出来たとされています。

ホスフィン(PH3)は誰が生成しているのか?

 研究チームは、金星におけるホスフィン(PH3)の生成源として、金星表面、隕石、雷、火山活動などのあらゆる生成源・過程を検討しましたが、今回確認されたホスフィン(PH3)の量と差があるため、現段階で生成源の特定には至っていません。

 研究チームは、ホスフィン(PH3)の検出が、金星における生命体の存在を確定するわけではないとし、金星において「未知の地質学的・化学的な要因」が存在するのではないかと考えています。

 論文においても、金星のホスフィン(PH3)が生命体由来であると仮定することは非常に投機的であるとしており、金星の大気サンプルリターンなどを行い、さらなる研究が必要であるとしています。

早起きして「金星」を見よう!

2020年9月17日 4:30頃の東の空

 今日、明日の朝4時ごろに東の空を見ると、皆さんのこぶし3個ほどの高さに、とても明るい星が1つ見えていると思います。それが「金星」です。

 まだ、どんな理由でホスフィン(PH3)が生成されているか分かりませんが、お隣の「金星」にもまだまだ分からないことが、いっぱいあるんだと思いながら夜空の「金星」を見ると、なんだかとてもワクワクしてくると思います。